リウマチの上肢病変と治療:37年の経験
リウマチは全身の免疫異常が原因となって起こる関節周囲の炎症を起こす病気で、中年以降の女性に多く発病します。症状としては、朝の手足のこわばりや手指の腫脹、左右対称性の関節腫脹が特徴的ですが一つの関節の腫れから始まることもあります。初期病変には採血による精密検査により診断します。治療法としては、免疫異常を調節するリウマトレックス(週1度の服薬が多い)を中心として、炎症の強い場合はステロイドも併用しコントロールします。最近(約10年前頃~)は、生物製剤といって、免疫異常に対して免疫反応を強く抑える注射が行われるようになり、リウマチ治療の革命ともいわれています。しかし、高価な注射であることと、副作用の問題もあり容易に導入すべき選択でもないことも事実です。基本的には、内科的治療法が中心ですが病変の進行により、関節の破壊、腱や靭帯の破綻などにより様々な変形をきたしてくるので、外科的治療も大切です。整形外科医の中でも特にこのリウマチ病変に対する手術を行うリウマチ外科という専門分野があります。関西医大の整形外科は初代の森益太教授、2代目の小川亮恵教授が世界的にも活躍したリウマチ外科医であったので、私も入局1年目からリウマチ尽くしの状況で研修が始まり20数年間関西医大に在籍しました。その後は松原メイフラワー病院、高月整形外科病院、東京八九十会クリニック、鹿児島日赤などを拠点としリウマチ上肢の外科一筋に邁進しました。これまでは医師向けの執筆と講演を行ってきましたが、今回患者様を対象にリウマチ上肢の病変と外科的治療につき、具体的な症例を中心にして示したいと思います。
(個人情報:症例の写真は、個人の特定ができないようにしてあります。また学会や論文などへの掲載の許可を患者様より得ています)
手関節の病変
関節の腫脹により痛みと不安定性が問題となります。伸筋腱の断裂も頻発します。
肘関節の病変
関節の腫脹と破壊により痛みと可動域制限が起こり、顔に手が届かなくなります。
尺側偏位
指が根元から小指側に曲がってきます、伸びも悪くなり、外観だけでなく手の機能障害が問題となります。
スワンネック変形
PIP関節(先から2番目の関節)が過伸展となり、曲がらなくなってくると摘みや握り動作が困難となります。
ボタン穴変形
PIP関節が伸びなく、曲がったままとなり、進行するとてのひらが開かなくなります。